第3回 発電する家×走るEV=エネルギー自給でちょっと未来のライフスタイル!

取材日 : 2025/02/08

特定非営利活動法人 環境エネルギー政策研究所(ISEP) 飯田 哲也所長

原子力産業や原子力安全規制などに従事後、「原子力ムラ」を脱出して北欧での研究活動や非営利活動を経てISEPを設立し、現職。

飯田哲也所長

Q1.EV、PHEVとは?

バッテリー(蓄電池)を持っていて、そのバッテリーの電気で動く自動車をBEV、バッテリーを持ち一部ガソリンも使う自動車をPHEVといいます。世界的にこの2つが電気自動車といわれており、現在急速に普及が始まっています。

世界各国の電気自動車新車販売は、ノルウェーでは新車販売の90%以上、中国では約50%、ヨーロッパ約20%。アメリカ約10%が電気自動車となっていますが、日本の約2%と遅れています。

各国の電気自動車普及のグラフ

地球温暖化問題を受け、化石燃料から再エネへ意識が向く中、ヨーロッパ、アメリカのいくつかの州、中国では、電気自動車を政策で普及させる動きが行われてきました。また、テスラが中国に工場を作り、電気自動車だけでなく、「ソフトウェアで管理できる次世代の車」を作り始めたことにより、電気自動車の普及がこの5年間で大きく加速しました。

Q2.総走行距離はどのくらい?どんな人におすすめ?

電気自動車は、フル充電で500~600kmは走れるため、街中を乗る分には困らないと思います。遠出をするときも、普通のガソリン車が休むように、その時に充電すれば問題ありません。新しいものに関心がある人は、ぜひ挑戦していただきたいなと思います。
電気自動車は、手頃なものでも普通の軽に比べると値は張りますが、ガソリン代に比べると、電気代は半分以下で済みます。また、オイル交換などが必要ないため、電気代を除きランニングコストがほとんどかからず、ガソリンスタンドに行く手間がなくなるなど電気自動車のメリットは多くあります。

ボンネットを開けた電気自動車

車のメンテナンスや維持費が心配な方、地球温暖化防止に貢献したいと思う方には、ぜひおすすめです。

Q3.ソーラーとEVがあればガソリン代は掛からない?

冬は発電量が落ちるため外から電気を買うこともありますが、春から秋は太陽光の電気が余るほどあるので、余った電気でEVの充電をすることが可能です。
充分なソーラーがあれば、光熱費が家の電気代だけでなく、ガソリン代も含めて0になるというのが良いと思います。

Q4.今後のEVの展望

世界全体のトレンドは、太陽光と蓄電池と電気自動車です。太陽光は10年前には世界全体の電力の約0.1%しかまかなっていませんでしたが、昨年は前年比5割増しとなっていて、世界全体の電力の9%となっています。
このペースでいくと、2030年には世界の再エネ設備を2020年比で3倍増すると、その8割が太陽光、残り2割が風力となります。2022年断面では世界の電力の30%が再エネでしたが、そのうち12%くらいが太陽光と風力でした。6割から7割達成できれば、今どんどん悪化している気候危機に対して最大の武器となりえるでしょう。

2022年と2030年の再エネ設備のグラフ

電気自動車の普及率も2012年では世界で0.01%だったのですが、昨年20%増え、このペースでいくと2030年までに世界の新車販売の8割が電気自動車に変わることが予想されます。そのことにより蓄電池が安くなり電力に使われる蓄電池も安くなっていくでしょう。
昨年アゼルバイジャンで開かれたCOP29では、2030年までに蓄電池を6倍にするということが決まりました。

太陽光と風力と蓄電池は電力市場の中で有効な親和性がありますので、太陽光と風力が余っているときは電気自動車の充電を、逆に足りないときには蓄電池からも電気自動車からも出していく。そうなると、太陽光・風力・蓄電池・電気自動車が社会の基本的なインフラになることが見えてきたと言えます。

この10年~文明的なエネルギー大転換が始まった

ただ、日本だけを見ると再エネに消極的で電気自動車の普及も遅れています。さらに日本の自動車産業はハイブリッドの開発により、世界の電気自動車化の取り組みに遅れている状況で、日本の環境エネルギーを超えた産業経済に突き付けられた非常に大きな課題となっています。

EVが蓄電池に!V2Hを使って車から家へ給電する未来のライフスタイル

太陽光で余った電気を車に充電し、夜は車の電気で生活をすることがこれから広がっていくと予想されます。ただ、実際使ってみると、例えば晴れたときに余った電気を充電したいけれども、出かけなければいけない、となると充電できない。逆に夜EVの電気でまかないたいけれども、夜出かけてしまうと電気を外から買うことになってしまう。

電気自動車の電力を自宅へと給電するフロー図

そういう意味では、少し余裕があったほうが良いです。例えば定置型の蓄電池と電気自動車を併用することで、常にバッテリーがあるという安心感があります。
電気自動車はまだ開発途上の機種なので、充放電効率があまりよくありません。往復で40%のロスになってしまいますが、そこはまだ技術開発の余地があります。

ドイツのフラウンホーファー研究所が昨年出していた製品だと充放電効率が5%ほど。世界各国で電気自動車と再エネと電気のグリッドを統合する流れにあり、技術開発の競争が起きているという状況です。

ソーラー×EVでCO₂を出さない暮らし その心地よさとは?

CO₂そのものは実感乏しいと思うが心地よさという意味でいうと大きく2つあると思います。まず実感できるのは、光熱費ガソリン代が下がり、ものすごく家計にメリットがあることです。2つ目は、電気・ガソリンを含めてエネルギーで自立しているということ。その上で気候危機・地球温暖化防止に貢献している、というのが心地よさにつながっています。

長野県はソーラー×EV生活に向いている地域

長野県は日本の中で最も日照が多いためソーラーを使うのは非常に有利です。できればそのソーラーを少し多めにつけ、ソーラーの電気を電気自動車に使うというのは長野に向いています。
中山間地が多い長野県では、今のような形のガソリンスタンドを維持するのも難しいと考えます。しかし電気自動車は、自宅に電気さえあれば充電できるため、エネルギーの自立と移動の権利を自分で確保することができるわけです。

長野県 再生可能エネルギーとして最も適しているのは太陽光発電

また電気自動車はモーターのトルクが速く坂道に非常に強いです。そして下り坂で発電しながら電気を回収します。ですので、電気自動車は山国には非常に向いているのです。また、電気自動車はモーターがガソリンのドライブと違い、きめ細かくコントロールできるため、雪道にも強い。さらに、もしガソリン車が雪で身動きが取れなくなった場合、暖を取ろうと思うと一酸化炭素中毒の危険がありますが、電気自動車は一酸化炭素を出さずに過ごせます。
家計に優しくCO₂も減らせる電気自動車は長野県にぴったりの自動車ではないかと思います。

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