第2回 屋根ソーラーのメリットを解説!

取材日 : 2024/10/28

東京大学大学院工学系研究科建築学専攻 前 真之 准教授

2008年より現職。
<現在の研究テーマ>
住宅のエネルギー消費全般

前准教授

Q1.住宅に屋根ソーラーを導入するメリットは?

住宅において大事なのは、冬暖かく夏涼しいこと、そして電気代の不安がないことです。その実現には住宅の性能を高める必要があります。
まず大事なのは断熱・気密性を高めること。そして少ない電気で十分に快適な環境をつくる高効率設備があること。さらに、自然エネルギーからエネルギーを作り出す太陽光発電を中心とした再エネが可能なことです。この3つの中で特にかかせないのが太陽光発電でしょう。

電気代を安くできる技術「断熱・気密」「高効率設備」「太陽光発電」

太陽光発電は世界的に見ると、2022年から2023年にかけて約4割増加し、設置する上でのコストも低下してきています。原子力発電・ガス発電といった化石燃料を用いる発電に比べ、太陽光発電の電気代は最も安くなっていますので、建設コストはかかりますが、ランニングコストはほぼかからずに電気をつくることができるようになってきています。

この10年で太陽光発電のコストは9割減少

自宅の屋根に乗せる太陽光発電のもう一つのメリットは、託送料金がかからないこと。託送料金とは遠くの発電所から電気を送るために発生する料金で、税金や再生可能エネルギー賦課金が必要ですが、自家消費している分についてはこれらの費用がかかりません。

屋根載せ太陽光自家消費なら託送料金ゼロ

Q2.売電価格が下がっている今 ソーラー導入を検討したほうが良い?

FIT(固定価格買取制度)は、家庭で使った後の余剰電力を10年間、高値で買い取る制度です。
FITは2012年に始まった制度で、2012年当時は、1kWhあたり42円で売電できました。それが、2024年には16円、2025年には15円に下がっています。
しかし、売電だけでなく、「自家消費することで電気を外から購入しない」というメリットは非常に大きいのです。自家消費をあげる工夫として蓄電池やおひさまエコキュートなども注目されてきています。
太陽光発電は2012年当時はまだ導入コストが高く、購入電力が25円と安かったためペイバックタイムは13年かかっていました。2024年に導入した場合、売電単価は16円に下がっていますが、購入電力の単価が30円、35円と高くなっているため、ペイバックタイムは短くなる計算となっています。

自家消費率30%と50%でFIT導入した場合の比較グラフ

大事なのは、以前に比べ設置コストが安くなったこと、買ってくる電気が高くなったこと、自家消費率を上げるために色々な工夫ができるようになったこと。この3つによって太陽光発電の採算性は以前よりも良くすることが十分可能になっています。今後さらに技術革新が進むことで、コストは安くなり性能は高くなります。太陽光発電は載せたほうが得であると知っていただきたいと思います。

タダの電気を使える屋根載せ太陽光は最強、自家消費を増やすのがカギ

Q3.既存住宅にパネルを設置するリスクはありますか?

もし新築で太陽光発電を乗せるとなった場合、屋根材と一緒に検討したほうがいいと思います。以前からある瓦葺きにしたいなら、瓦のなかに数枚支持瓦を入れることで、瓦に穴をあけずに施工することができる支持瓦工法をお勧めします。既存の瓦に取り付けるにはアンカー工法があり、瓦に少し穴をあける必要がありますが、きちんと施工すれば問題ありません。

支持瓦工法とアンカー工法

スレート瓦は耐久性が低いため新築ではあまり使われなくなっています。
現在新築で非常に増えている葺材が金属屋根。耐久性があり非常に軽いというメリットがあります。一般的な和瓦を家一軒に乗せると4・5トンになりますが、金属屋根に変えることで10分の1の重さにすることができます。耐久性・耐震性に有利ということで、金属屋根が非常に増えています。さらに、「つかみ金具工法」で穴をあけずに設置することができるため、新築では金属屋根とつかみ金具工法の組み合わせがおすすめです。

スレート瓦と金属屋根

Q4.太陽光発電は本当に環境に良いのでしょうか

パネルは一種の半導体であるため、「製造時にかかるCO2のほうが多く、環境に悪いのではないか」という人がいらっしゃいます。環境省によると、太陽光発電を製造するために消費されるエネルギーはおよそ1.4年~3.4年、CO2排出量は2.1年~4.2年でペイバックされるとレポートされています。
2010年から2022年にかけて、太陽光発電のコストは世界中で約10分の1ほど安くなっています。これは製造時に特にコストのかかる銀の利用が減っていることや、高効率で作れるようになっているからと考えられます。シリコンをつくるのにエネルギーはかかりますが、そこで使うエネルギーも石炭火力の電気ではなく、再エネの電気を使うなど、製造の改善も行われていますので、技術革新により製造時のエネルギーCO2が少なくなってきているといえると考えています。

太陽光パネル製造の改善により製造時のCO2は少ない
太陽王発電はメリットが大きいリスクは小さい

太陽光発電に適した長野県のみなさまへ

長野県はお日様に恵まれた地域で、実際に日本の中でもトップクラスで太陽光発電に向いた地域です。寒い冬や暑い夏でも健康で快適な生活を送りながら、電気代も安心できる太陽光発電を、ぜひ活用していただければと思います。
地球にとっても日本にとっても地域にとってもメリットがある中で、リスクはこの何十年間でものすごく小さくなってきています。ぜひ自分でも調べていただき、皆さまにとっていい流れをぜひ考えていってほしいと思います。

一覧へ戻る

初めての方へ

あてはまるものを選ぶだワン!